高齢者の死亡原因の上位に挙げられる「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」。食べ物や飲み物、唾液などが誤って気管に入り込んで起こる肺炎で、特に75歳以上で発症リスクが急激に高まると言われています。ご家族の中に高齢の方がいらっしゃると、一度はこの病名を耳にされた方も多いのではないでしょうか。
今回は、ご自宅で介護をされているご家族、また老人ホームへの入居をご検討中の方に向けて、誤嚥性肺炎の原因・日常でできる予防策・もしも誤嚥が起こったときの対応について、大阪ハピネス老人ホーム紹介センターが解説いたします。
誤嚥性肺炎とは
本来、食べ物や飲み物は口から食道を通って胃へ運ばれます。しかし加齢などによって飲み込む力(嚥下機能)が低下すると、本来食道に入るべきものが気管へ流れ込んでしまうことがあります。これが「誤嚥」です。
誤嚥した内容物に含まれる細菌が肺の中で増殖することで発症するのが、誤嚥性肺炎です。怖いのは、高齢の方の場合むせ込み(咳反射)が弱まっているため、誤嚥に本人もご家族も気づかないまま静かに進行する「不顕性誤嚥」が多いという点です。夜間、寝ている間に唾液をわずかずつ誤嚥しているケースも珍しくありません。
主な原因
加齢による嚥下機能の低下
舌や喉の筋力、咳をする力は年齢とともに少しずつ衰えます。飲み込みの反射が遅れることが、最も基本的な原因です。
脳血管疾患の後遺症
脳梗塞や脳出血を経験された方は、嚥下に関わる神経や筋肉に麻痺が残っていることがあり、誤嚥のリスクが高まります。発症直後だけでなく、回復期以降も注意が必要です。
口腔内の環境悪化
歯磨きが十分でない、義歯が合っていないなどの理由で口腔内に細菌が増えていると、誤嚥した際に肺炎を発症する確率が大きく上がります。「もし誤嚥しても肺炎にならない」状態を作るために、口の清潔さは欠かせません。
認知症の進行
食べ物を口に入れたまま動きが止まる、よく噛まずに丸飲みしてしまう、食事に集中できない、といった食べ方そのものの変化が、認知症の進行に伴って現れることがあります。
日常でできる予防のポイント
食事の姿勢と一口の量
食事中は背筋を伸ばして椅子に深く腰掛け、顎を軽く引いた姿勢が基本になります。テーブルが高すぎると顎が上がり誤嚥しやすくなるため、肘が自然に乗る高さに調整してください。一口の量は小さじ一杯程度を目安にし、しっかり咀嚼してから飲み込む習慣を意識しましょう。
とろみ調整食品の活用
水・お茶・味噌汁といったサラサラした液体は最もむせやすい食品です。市販のとろみ剤を少量加えてまとまりのある状態にすると、飲み込みやすくなり誤嚥を防げます。ヨーグルト程度のとろみが目安です。
口腔ケアの徹底
食後の歯磨き、義歯の取り外しと洗浄、舌のケアを習慣化してください。口の中の細菌量を減らすことは、誤嚥を防ぐと同時に「万一誤嚥しても重症化させない」ための最も効果的な対策と言われています。
嚥下体操とパタカラ体操
食事の前に「パ・タ・カ・ラ」とはっきり発声する体操、首をゆっくり回す運動、舌を上下左右に動かす運動などを行うと、嚥下に関わる筋肉を鍛えられます。1回数分でも毎日続けることが大切です。
誤嚥が起こったときの対応
食事中にむせ込みが続いたり、声がかすれたり、明らかに息苦しそうな様子が見られたら、すぐに食事を中止します。意識があり咳ができる場合は、無理に背中を叩いたりせず、本人にしっかり咳をしてもらうことが基本です。
もし食べ物が完全に詰まって声が出ない・顔色が青白い・呼吸ができないといった様子であれば、ためらわず119番通報してください。背部叩打法や腹部突き上げ法(ハイムリック法)の知識があると、救急車到着までの対応に役立ちます。
食後しばらくしてから発熱や元気のなさが続く場合も、不顕性誤嚥の可能性があります。早めにかかりつけ医に相談しましょう。
老人ホームでの対応
介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームでは、看護師や介護スタッフが入居者一人ひとりの嚥下状態に応じた食事形態(常食・きざみ食・ソフト食・ミキサー食など)を提供しています。施設によっては言語聴覚士や歯科衛生士と連携し、定期的に嚥下評価を行っているところもあります。
誤嚥性肺炎の既往歴がある方や、嚥下に不安のある方が施設を選ぶ際には、「食事形態のバリエーション」「口腔ケアの実施頻度」「医療機関との連携体制」「夜間の看護体制」を必ず確認したいポイントとして挙げられます。
ご家族が日常で気づきたいサイン
誤嚥性肺炎は「気づかないうちに進行する」ことが厄介な病気です。次のようなサインが見られたら、軽視せずにかかりつけ医に相談してください。
- 食事中に咳き込むことが以前より増えた
- 食後に声が「ガラガラ声」「湿った声」になる
- 食事に時間がかかるようになった、または食事量が落ちた
- 体重が短期間に減少している
- 微熱や倦怠感が続く
- 痰が増え、色が黄色〜緑色っぽくなった
- 夜間や明け方に咳き込むことがある
これらは単独で見ると風邪や加齢の自然な変化のようにも見えますが、複数同時に現れる場合は要注意です。
嚥下機能を診てもらえる医療機関
飲み込みに不安を感じたら、耳鼻咽喉科やリハビリテーション科で「嚥下内視鏡検査(VE)」や「嚥下造影検査(VF)」を受けることができます。検査結果に基づいて、適切な食事形態や姿勢、リハビリの方針を医師や言語聴覚士から提案してもらえます。お住まいの近くにこうした検査ができる医療機関があるかは、地域包括支援センターやケアマネジャーに尋ねるとスムーズです。
また、肺炎球菌ワクチンの定期接種も予防策の一つです。65歳以上の方は5年に1回、定期接種の対象となります。誤嚥性肺炎自体を100%防ぐワクチンではありませんが、重症化のリスクを下げる効果が報告されています。インフルエンザワクチンとあわせて、毎年の予防接種スケジュールに組み込まれることをおすすめいたします。
まとめ
誤嚥性肺炎は、日々の小さな工夫の積み重ねで大きくリスクを下げられる病気です。とはいえ、ご自宅での介護では限界を感じるご家族も多いのが現実です。
大阪ハピネス老人ホーム紹介センターでは、嚥下障害をお持ちの方や誤嚥性肺炎の既往歴がある方にも対応できる老人ホーム・介護施設のご案内を行っております。ご相談はもちろん無料、施設の押しつけも一切いたしません。お気軽にお問い合わせくださいませ。